ハイドロリリース(筋膜リリース、神経リリース)

ハイドロリリース

超音波検査により可能となった最新の治療

超音波検査により可能となった最新の治療ハイドロリリース(筋膜リリース、神経リリース)とは、こりや疼痛(とうつう)などに関わっている筋膜や神経の癒着(くっつき)を剥離(リリース)することで筋肉や神経の状態を回復させ、痛みやしびれなどの辛い症状を取り除く治療法です。
超音波(エコー)で筋膜や神経などの組織を確認しながら、目的の箇所にピンポイントで薬液を注射することで、筋膜や神経のくっついたところを剥離し、筋肉や神経の動きを良くします。神経の癒着が剥がせると、痛みやしびれなどの神経症状の改善に期待できます。
多くのペインクリニック(痛みを治療する診療科)で受けられる局所注射には、麻酔剤や鎮痛剤が含まれています。
一方、ハイドロリリースの場合は、筋膜や神経の癒着を剥離する目的で行われるため、僅かな麻酔薬が入っている生理食塩水を注射します。そのため、副作用のリスクや身体への負担が少ない治療法だと言えるのです。
ただし、筋膜や神経の癒着は、日ごろのライフスタイルや日常的な動作の積み重ねによって、起こるものです。
再発を予防するには、理学療法士の指導の下で行う運動療法や、日常で行う正しい姿勢・動作の見直しを積み重ね、きちんとリハビリテーションに励むことも不可欠です。
当院では、理学療法士によるリハビリテーションも受けていただけます。複数の治療法を併せて行うことで、お悩みの症状を解消していきます。

筋膜とは

筋肉の表面をはじめ、1本ごとの筋線維や骨、血管、内臓、神経など、身体の様々な組織を包み込んでいる膜です。
様々な組織を適切な位置になるように保つ役割を担っています。

筋膜の役割について

姿勢の維持

筋膜は全身のあらゆる組織を包んでいて、全身に張り巡らすネットワークで姿勢を維持しています。
このネットワークのおかげで、前後左右のバランスを維持することができるため、「歩く」「立つ」などの動作を行った時でも姿勢を保つことができるのです。このことから、筋膜は「第二の骨格」とも呼ばれています。

力の伝達

全身にネットワークを張り巡らしているため、腱や筋肉の力が発生すると、その隣にある腱・筋肉へ伝達されます。
この機能のおかげで、複数の腱や筋肉を動かす必要がある動作がなめらかにできるのです。

体の情報を脳に伝えるセンサー

筋膜には、圧迫や伸展などを捉える「機械受容器」と体の内部の状態を捉える「固有感覚受容器」という神経がたくさん存在します。脳が、「体が今どうなっているのか」を知るための貴重なデータを発信するのが、筋膜なのです。

痛みが起こる仕組み

痛みが起こる仕組み姿勢を悪くしたまま長時間過ごしたり、身体に負担のかかる動作を繰り返したりすると、筋膜にしこりや癒着ができやすくなります。
これにより、血行不良や筋力・可動域の低下などのトラブルが発生します。
これらが、痛みを感じる原因となります。

筋膜のしこり・癒着によって起こるトラブル

  • 肩こりや腰痛などの痛みが現れる
  • 関節可動域(柔軟性)の低下
  • 筋肉の出力低下

筋膜のネットワークは網目上に張り巡らされています。人が身体を動かすことで、筋膜は伸縮して機能を維持することができるのです。
しかし、同じ姿勢で長時間過ごしてしまうと、筋膜の一部が伸び切ったり縮んで高密度化したりします。筋膜が上手く元の状態へ戻れなくなると、変形した状態のまま固定化されてしまいます。
変形した筋膜は水分量が減って滑りが悪くなるため、組織がくっつきやすくなり、しこりなどを招きます。これによって可動域制限などが起こり、筋膜にあるたくさんの固有感覚受容器が脳へ伝達することで、痛みを感じるようになります。
このような流れで現れた筋膜のしこりや癒着を改善させ、元の健康な状態へ戻すのが「ハイドロリリース」です。

神経の癒着によって起こるトラブル

近年、高精度の超音波が開発され、これまでよく見えなかった末梢神経という細い神経までもが、タイムリーに観察できるようになりました。そこでわかってきたのが、末梢神経が癒着や血行障害などの障害を受けると、滑走が悪くなり、結果として痛みを生じるというものです。
この、滑走性の悪くなった神経にハイドロリリースをすると、神経の動きが良くなり、痛みの改善につながります。

ハイドロリリースの治療効果

筋膜や神経が元の健康な状態になるため、筋膜や神経のしこり・癒着によって現れた慢性的な痛みの解消に期待できます。また、筋膜や神経が回復することで可動域も改善されるため、身体が動かしやすくなります。

ストレッチとの違い

ハイドロリリースはストレッチと異なり、広範囲に、かつ様々な方向へ圧をかけることができます。
しこりや癒着を剥離するのに必要な方向全てに、適切な圧をかけることが可能ですので、ストレッチよりはるかに上回る効果が得られます。

治療のポイント

ハイドロリリースは超音波検査の技術進歩によって実現可能になった治療法です。
画像を見ながらピンポイントに注射を打つことができる治療法ですので、効率的に筋膜の癒着を剥離することができます。神経の癒着も剥がせるため、手足などのしびれも解消できます。
ペインクリニックで受ける治療とは異なり、ごく僅かな麻酔薬が入った生理食塩水を注射する方法です。
そのため、麻酔薬による副作用のリスクはほとんどありません。治療効果と安全性の高さが、ハイドロリリースの大きなメリットと言えます。

治療後の注意事項

しこりや癒着は、日ごろのライフスタイルや姿勢の癖などによって再発しやすいです。そのため、きちんと再発を防ぐには、ハイドロリリースだけではなく「運動療法(リハビリテーション)」も併せて行うことが重要です。
運動療法で筋力や柔軟性を高め、正しい姿勢や動作がスムーズにできるようにするため、当院では理学療法士が患者様一人ひとりに合ったメニュー作成を行い、分かりやすく指導していきます。保険適用内でリハビリテーションが受けられますので、積極的に活用することをお勧めします。

ハイドロリリースに関するQ&A

どういった疾患や症状に効くのですか?

ハイドロリリースは、筋肉の硬直・収縮によって発症した、肩こりや腰痛、神経の癒着からくる痛みを治すのに有効です。 ハイドロリリースで筋肉や神経の動きを改善させて、運動器リハビリテーションを行うと効果がさらにアップするといわれています。

ハイドロリリースで治療するのが難しい首、肩の痛みはありますか?

筋膜や神経の癒着からくる痛みでしたら、ハイドロリリースで解消させることができます。
ただし、頸椎・脊髄の疾患(頚椎症や椎間板ヘルニアなど)、関節内の炎症などの場合は、ハイドロリリースだけで治すのが難しいため、別の治療法と一緒に行う必要があります。
肩関節の障害につきましては、肩関節内注射と組み合わせて行う場合があります。
頸椎や脊髄の疾患につきましては、点滴や神経ブロック、投薬などから選択します。

費用はどれくらいかかりますか?

先述したような疾患によって首や肩、背中の痛みが現れているケースが多いため、当院では保険適用内でハイドロリリースを提供しています。

1回注射しただけで、肩こりや腰痛は治りますか?

日ごろから筋肉に負荷をかける仕事に従事している方や、身体に負担をかける姿勢が癖になっている方は特に、慢性的な肩こり・腰痛を抱えている傾向があります。
そのため、ハイドロリリースを行ってもすぐに再発してしまうケースが多いです。
肩こり・腰痛がひどい方は特に、定期的にハイドロリリースを受けに受診されることをおすすめします。また、ストレッチやマッサージなどの理学療法も一緒に行うと、よりハイドロリリースの効果が発揮されやすくなります。
当院では、医師と理学療法士が連携し合いながら、痛みの原因となる箇所の特定からハイドロリリース、徒手療法を組み合わせ、患者様の痛みを解消していきます。

ハイドロリリースは痛いですか?

ハイドロリリースでは、以下のタイミングで痛みを伴うことがあります。

  1. 注射針を刺す時の痛み
  2. 発痛源に当たった時の痛み
  3. 薬液を入れた時の痛み
  4. 注射の後の痛み

1:極細針を使用することで、刺す時の痛みを軽減させています。
2:発痛源は痛覚が敏感になっているため、当たった時は痛みが生じやすいです。
3・4:当院では、保険診療でハイドロリリースを行う際、局所麻酔薬が含まれた生理食塩水を使います。ただし、生理食塩水は5~6 pH(ピーエイチ)で、局所麻酔薬は4~7 pHとやや酸性ですので、注入する時や注入した後に痛みが生じることもあります。
ハイドロリリースは筋膜の癒着を剥離し、滑走性を得ることで痛みが落ち着くようになるため、局所麻酔薬を使って麻酔効果を得る必要はありません。生理食塩水やヒアルロン酸、重炭酸リンゲルなどの方が安全でかつ、有効だと言われています。
しかし、局所麻酔薬を含めずにハイドロリリースを行う医療行為は、現在のところ保険適用の対象外となります。

局所麻酔薬を注入しないハイドロリリースは可能ですか?

ご希望の方には、局所麻酔薬を注入しないハイドロリリースに対応しています。ただしその場合は自由診療の扱いとなります。
注射時の痛みを軽減させ、より安全性を高めるために、当院では生理食塩水を用いています。そのため、局所麻酔薬のアレルギーを持っている方や妊娠中の方でも、リスクを気にせず治療を受けていただけます。
また、問診・診察の結果内容によっては、保険適用となる別の治療法を推奨することもあります。

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